
Adobe Commerceの概要
Adobe Commerceは従来Magento(マジェント)と呼ばれる、世界中で人気のあるECプラットフォームソフトウェアが、2018年にAdobeに買収され、最近Adobe Commerceに名称変更されました。
同じくECプラットフォームソフトウェアであるDemandwareがほぼ同時期にSalesforeceに買収され、Salesforce Commerce Cloudに名称変更されたことと同じです。
現在もMagentoの名称の方が親しまれていますが、Adobe Commerce=Magentoの関係性は具体的には以下のようになっています。
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- 有料版 – Adobe Commerce
- 無料版 – Magento Open Source
過去有料版のMagentoは、Magentoのバージョン1系の時にはMagento Enterpriseという名称でした。
Magentoが2系となってからはMagento Commerceという名称となっておりましたが、それがAdobe Commerceへと名称変更されています。
一方無料版は、Magento 1系ではMagento Community Editionと呼ばれ、Magento 2系ではMagento Open Souceと名称変更されましたが、Adobe社の所有物ではなく、オープンソース開発コミュニティによって運営されているため、Adobeの名前は用いられず、Magentoの名称が継続されています。
Adobe Commerceのエディションについて
Adobe Commerceには大きく、サーバーにインストールして使用するオンプレミス版と、予めインフラ環境や開発環境一式が用意されたクラウド版とがあります。
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- オンプレミス版 – Adobe Commerce
- クラウド版 – Adobe Commerce Cloud
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クラウド版にはMagentoが動作するアプリケーションサーバやDBサーバの他にも、高速全文検索のElastic Searchや、CDNとWAF(Fastly)、性能モニター(New Relic)、キャッシュストレージ(Redis)などが含まれます。
例えばAdobe Commerceのライセンスを調達する、またはMagento Open Sourceを使用し、インフラ環境においてAWSで同様のマネージドコンポーネントを用意して使用する場合に比べると、クラウド版で利用する場合の費用は破格に安価に抑えられる特徴があります。
Adobe CommerceとMagento Open Sopurceは同一のソースコードが用いられていますが、一部Adobe Commerceにしかない機能などもあります。
その詳細については以下のページで詳しく解説しています。
・Adobe Commerce(有料版)とMagento Open Sopurce(無料版)の比較記事は こちら
Adobe Commerceの強みと、採用する理由
Adobe CommerceまたはMagento Open Souceは共通して、他のプラットフォームにはないけれども、大規模であったり複雑な要件の際に強力にサポートされる機能が予め備わっています。
もちろん以下に紹介するだけには到底止まらないのですが、圧倒的な差を見せつけている特徴を紹介します。
なおこれまでAdobe CommerceやMagento Open Sourceは多言語・多通貨対応が可能であることを理由に越境ECサイトでの利用価値が強く謳われておりましたが、国際的プラットフォームにおいてそれはあまりにも当たり前のものですので、特徴からはあえて外して考えています。
その1. 複数ECサイトを1環境上で運営できる。
Adobe Commerce(Magento)は、1つの環境で複数のサイトを運営できます。ECサイトを運営するためのOSのようなイメージです。
全く異なるECサイトであるにもかかわらず、実は裏で一つのAdobe Commerceが動いているということが実現可能です。
ただし、Adobe Commerceの場合、ドメイン単位で課金されるので注意が必要です。Magento Open Sourceの場合は、何サイト、何ドメインでも、そもそも無料なので追加費用がかかりません。
複数ECサイトの運営が可能だと、実際の事例として以下のようなケースに役立てられています。
A. ホールディングスで各事業会社のECサイトをメンテナンスしたい
ホールディングス化されていて、その情報システム部門が一括してメンテナンスするとなった場合、各事業者ごとにECサイトがあると、その数分だけメンテナンスのマンパワーや、知識・教育が必要になります。しかし一つのAdobe Commerceですべてのサイトを運営できるのであれば、ノウハウやメンテナンスは一つだけで済むことになります。
各事業会社ごとに商品、デザイン、機能、決済方法が異なっても共通でも全然問題ありません。各ECサイトごとに異なる設定をしていけば良いだけです。
あくまで例としてホールディングスと事業会社のケースを説明しましたが、一社で複数のブランド展開や、複数の商品展開しているケースにも完全に当てはまります。
鞄と靴を取り扱う企業が、2つ全く別のサイトを運営していませんか?
このような無駄をなくするべきという概念に立っているソフトウェアがAdobe Commerceであり、その他のプラットフォームでは実現ができません。
B. グローバル企業展開している
ECサイトはその仕組み上、商品登録する際につけられる通貨は一つだけです。
例えば日本円で登録した場合、ドル決済ができません。ドル決済できないというのは、売上をドル口座に入金させることができないということです。
しかしAdobe Commerceの場合は、各国用のサイトごとに使用する通貨を変えれば良いので、例えばアメリカならUSドルで商品登録と決済、日本なら日本円で商品登録と決済、ユーロなら、人民元なら、と自在に設定ができます。
グローバル展開しても本社の方でガバナンスを集中管理させたいケースにもってこいです。
→具体的な複数ECサイト運営の方法は こちら
その2. オープンソースであること
Adobe Commerceと並んで比較検討されるソフトウェアは、Salesforce Commerce Cloud(旧Demandware)やecbeing, ebisumart, SI Web Shopping, SAP HANA(旧Hybris)などがあると思います。
※ Shopifyは採用する企業規模や事業規模がこれらと異なる、小規模やスタートアップ向けのプラットフォームのため、敢えて除外しています。 詳しくは こちら
その中で唯一、Adobe Commerceだけがオープンソースソフトウェアであるため、拡張性が無限です。
具体的なケースを挙げると例えば決済方法。プラットフォームで選択できない決済方法はどう足掻いてもプラットフォームの制約に引っかかり対応できないなどがあります。
通常クレジットカード決済を実装するには、GMOペイメントゲートウェイや、ペイジェントなどの決済代行会社を利用することが多いのですが、超大企業の場合、決済サービス自体も自社グループに抱えているケースがあります。そのような場合、オープンソースであるAdobe Commerceであれば、はいそうですか、と繋ぎこむモジュール(Adobe CommerceやMagentoではエクステンションと呼びます)を作ればいいという発想になりますが、その他オープンソースではないプラットフォームでは、いちいちできる、できないを考えないといけないことは、いかに面倒なことか考えてみてください。
その3. 圧倒的大規模ECサイト対応力
数百万点、数千万点の商品を登録しても、ソフトウェア的にびくともしないアーキテクチャは、Magento1系から引き継がれています。
配慮のない(特に国産プラットフォームに多い)他のECプラットフォームソフトウェアでは数百の商品を登録しただけで速度劣化し、ひどい場合、トップページの表示だけで数分みたいなケースもあったりします。
なおAdobe CommeceやMagentoで構築したけれども表示が遅いと感じられた場合は、技術的な問題で、開発したベンダーの技術力に疑問を持ってください。
きちんと組み上げればAdobe Commeceはどのプラットフォームより表示速度はは早いです。
ユーザーアカウントが大量のケースにおいてもスムースにログインできます。事実として当社もダミーのユーザーを1200万件登録しログインテストしましたが、全く速度劣化がありませんでした。
このように、フロントエンド表示においては細部まで速度追求されており、表示速度がコンバージョン率に大きな影響を与えるECシステムにおいては、重要なポイントです。
Adobe Commerceの機能一覧
Adobe CommerceはMagento Open Sourceに対し機能が拡張されたものです。
おおむね以下のページに紹介された機能がある点を把握いただければご理解いただけると思います。
EXCELファイルでのダウンロードも可能ですので、導入検討の際にもお役立てください。
・【人気記事】 Magento 機能一覧は こちら
以上の機能に対し、Adobe Commerceのみに実装されている機能については、以下の記事でご紹介しています。
・Adobe CommerceとMagento Open Sourceの比較は こちら
まとめ
これまでの内容をご覧いただけると、いかに複雑、大規模なケースにおいて、Adobe Commerceが群を抜いて秀でていることがお分かりいただけたかと思います。
しかし、これだけの多機能で複雑なことを実現可能であるがゆえに、その取り扱いが非常に難しいという特徴があります。
事実として、買収したAdobeも、日本国内には詳しい人がおらず、当社のようにそれ以前からずっとかかわてきたベンダー頼みになります。
Adobeのパートナーも、同社の他の製品を取り扱ってきた延長で取り扱えるように見えるかもしれませんが、あくまで後からAdobeのラインナップに加えられただけであり、必ずしも同社製品のパートナーが取り扱えているかというと、全くそうではないという実情があります。
日本国内で実績と経験がある人または会社は数名、数社しかおりません。
一方アメリカやベトナム、ヨーロッパ圏には多くの習熟したAdobe CommerceおよびMagentoのエンジニアがいますが、言葉や為替の壁もありますし、世界中から大人気で、抱え込むことはそれなりの難易度があることでしょう。
当社Digital-Freeは10年以上Adobe CommerceとMagrntoだけを取り扱った専門企業で、当然当社のスタッフは全員専門家です。
少数精鋭ではありますが、元は大規模のシステム開発を経験した人員で構成しており、小規模から大規模まで、数多くのECシステムをサポートさせていただいております。
ECサイト構築で失敗しないために
ECサイトの新規導入や、既設ECサイトからの刷新において、確実に成功させるためのヒントをご紹介しています。
以上をご参考にAdobe Commerceのご導入や、ECサイトのご導入にお役立ていただければ幸いです。
Adobe Commerceのご導入に関するお問い合わせ
当社Digital-Freeは、10年以上のAdobe CommerceおよびMagento Open Sourceの経験がございます。
Adobe Commerceのご導入の際はぜひ当社にご相談ください。
注意点なども多くございますので、当社のコンサルトがメリットデメリットを隠すことなく、丁寧にご説明いたします。