昨今、モールではなく単体型のECサイトを構築するプラットフォームとしてのシェアが大変伸びており、ついにMagentoのシェアを追い越したShopifyですが、Magentoと比較されることが多いようです。

  • Magento – 基本的に高機能で大量データの対応や複数ウェブサイト環境を構築可能なシステムが採用されているためミドル〜ハイエンド向けまたはEC中級者〜上級者向け
  • Shopify – 機能が少なくそのためシンプルな使い勝手を提供しており、EC運営初期段階や、初心者、エントリーユーザ向け

以上のようにそれぞれ明確にユーザ層の異なる特徴を持ったECカートプラットフォームですので、自ずと選択するべきものは決まっています。
このため比較すること自体あまり意味がないと思うのですが、Magentoの詳細について他の比較記事では正確でない、または詳しくなかったり、過去のMagentoを持ち出して比較されていたりという情報が多かったこともあり、あらためて比較記事をまとめたいと思います。

※当社ではShopifyの機能も全網羅しており、その上でMagento構築および導入コンサルティング事業を営んでいます。

なお、以下で紹介する比較表ですが、Magentoの公式ブログから引用している関係で、Magentoに有利となっている点が払拭できませんが、内容としては事実だと思います。

ただ、機能面でMagentoは確かに勝るのですが、その分複雑で運用における取り扱いが難しい一方で、Shopifyは洗練されたUIや操作性により大変使い勝手が良いと評されており、どちらを採用されるかについては本記事の他、ECプラットフォームを予算・売上・戦略 3つの観点で比較の記事も参考にされることをおすすめ致します。

MagentoとShopifyの比較表

Magentoの配布資料、「Magento vs. Shopify Comparison Guide」から一部引用

Magento Shopify
費用 無料版から有料版あり 月額33ドルから
この他にShopifyPaymentによる販売手数料あり
エクスペリエンス ドラッグ&ドロップで画面編集を行うPage Builder,コンテンツ公開前のステージング機能 Webテンプレートに制限があり、結果Shopifyで構築されたどのサイトも似た様な見た目のストアになる
3,600種にも登る充実したエクステンションを用いて支払い方法、税金、配送など様々な機能を自由に追加可能 サードパーティモジュールがまだまだ少ない
店舗受取りやプリオーダー、バックオーダーなどの処理も可能 取り扱える支払い方法の数と種類に制限があり、決済サービスも自社保有するケースに適用ができない
CRMやERPなど様々なサードパーティ製のサービスとのシームレスな連携が可能 対応するサードパーティのサービスがMagentoと比べ少ない
拡張性 エクステンションを用いる以外にもオープンソースであることから自由度が高く制限のない無限のカスタマイズが可能 異なるユーザで共通のプラットフォームを使用するためカスタマイズが不可能な制限に直面する可能性がある
1,000に及ぶ外部のサードパーティのデジタルツールやソリューションに適合している 大半はBasicプランで利用されているが、結局上位のプランへと変更することがほとんど
BtoCだけでなくBtoB用途も予め配慮された機能が搭載されている BtoCのみでしか利用される想定がない
越境ECを運営する際、すべての国の言語と通貨、決済方法、配送方法を利用することができる Shopifyの方で用意した言語と通貨、決済方法、配送方法のみに絞られ、またユーザー側での追加も不可
規模が大きく成長性の高い企業で要求されるような注文管理や複雑な商品管理、複数サイトといった機能がない
配送と管理 複数のECサイト、多言語サイト、現地支払い方法や配送方法を1つのMagento環境で実現できる Shopifyの1インスタンスでは1言語1通貨のみのサポートであり、複数言語と通貨に対応するためには追加費用が必要となる。また国ごと、ブランドごとに1インスタンスで運営することは不可能で分離されており、管理画面もばらけることになる。
支払い、フルフィルメント、カスタマーサポート、マーケティングに至る、特定のビジネスゴールに併せて最適化が可能である。 アプリマーケットの規模がまだ小さく、すぐに利用できるものはまだ多くない。Shopifyにもある程度はカスタマイズ可能な領域が設けられているが、ユースケースによって追加カスタマイズも必要になり、結果複雑化し、ローンチまでの時間が増えることも否めない。
ブランドに対する購入体験や再訪、再購入を実現するための柔軟性を備えている。 カスタマイズ要素に関しては、開発者のサポートが限定された独自言語を使用しており、メンテナンスの難易度と費用を上げる要因となっている。
複雑な業務をサポートするMagento BIやMagento Shippingのような強力な機能を備えている。(有償オプション) 商品の属性とサイズ設定に制限があり、大規模で複雑な商品の組み合わせや、独自の販売形態にも対応できない。
パフォーマンスへの配慮 BtoCのオンライン販売事業者上位500社のうち70社と、BtoBオンライン販売事業者300社のうち40社で利用されており、また、ヘルスケア、美容、ホーム&キッチン、ファッション、アパレル、電化製品、スポーツ、メディアなど315,000を超えるサイトで活用されている。 BtoCの売上上位サイトでは利用例が少なく500社のうち10社のみで利用されている。
Magento Commerce CloudはAWS上で動作しており、99.99%の稼働率とスケーラビリティ、グローバルな拠点からのアクセスを担保している。 多数の販売者が同一のプラットフォームを共有しているため、他の利用者の影響を受けパフォーマンス劣化する可能性がある。
優れたパフォーマンスツールとレポートツールが提供されており、ビジネスゴールに向かってサイトを調整したり、差別化されたショッピング体験を提供するオプションが含まれている。 プラットフォームが非公開であるため、管理、最適化に制限がある。Shopify本体のコアアプリとアドオンしたアプリ間でのデータのやり取りの量も制限されるため、高トラフィック時にパフォーマンス劣化する恐れがある。
強力なBIツール(有料オプション)が含まれ、ビジネスを効率的に運営するための付加価値がある分析を可能にしている。 データ分析とレポートは限られたものである。
サポートと開発体制 260,000人を超える開発者コミュニティによってサポートされており、開発者が常に新しいイノベーションと機能を作り上げたものを利用できる。 Shopify1社のみの開発である他、アドオンするにも独自のLiquid言語を使用しているため、開発者の調達に限りがある。
厳格な審査を経て認定されるソリューションパートナー、テクノロジーパートナー、コミュニティインサイダーのパートナー制度により、パートナーの品質が保証されている(現在はすべてAdobeのパートナー制度に統合されています。) パートナーコミュニティが小規模で、主に北米だけである。様々な販売者がEコマースを立ち上げ成長を支援した経験が少ない。

まとめ

以上の内容に関して、ShopifyはMagentoより後発で出てきたプラットフォームであり、まだその周辺のサードパーティベンダーが様子見であったりすることから、特にサードパーティ性ツールとの連系や拡張プログラムの数といった意味ではまだまだMagentoに分があるようです。

ただ、Shopifyのシェアが右肩上がりに伸びており、北米だけでなく御存知の通り日本国内でもコミュニティが拡大しユーザーも増えていっていることも事実です。とりわけ保守的な考えを持つヨーロッパのユーザーはまだShopifyを様子見していると聞いたことがありますが、ヨーロッパにはMagentoのベンダーも非常に多く、Shopifyもこの地域を取り込むことができたら情勢が変わってくることも十分に考えられます。

またShopifyでは出来ないことがわかったためMagentoで可能かと言った相談を受けることが非常に多くなってきました。皮肉にもShopifyの認知度が日本国内で向上したことにより、Magentoのニーズも伸びてきたという事情もあると思います。特に、BtoB用途であったり、中国本土展開においてはその傾向が顕著です。(Shopifyでは中国で主流のWeChat PaymentやAlipayを搭載できず、CDNのエッジも中国国内設置されておらず、遅延の他アクセス不可となる懸念がある。)

ShopifyもMagentoもさすが世界レベルのシェアを誇るふんだんな開発費用を元に提供されたソリューションですので、物は確かだと思います。
そしてこれまで国内他社の実績や安心感で選ぶと言った日本国内のユーザーの傾向が、ShopifyやMagentoといった中身あるものを選ぶ方向にシフトしてきたことは、日本のEC業界にとって大きな進歩だと言えます。

ただし、今現在の日本のMagento界隈では、特に開発において他社でトラブルが多く発生しており、当社に相談いただくケースが増えてきていることも事実です。
先に日本で普及したMagentoが今このような状況になっていることを考えると、後から参入したShopifyも数年後にはこうしたトラブルが多発することはほぼ確実です。

日本国内の多くのShopifyベンダーはデザインはできるけど開発は苦手、アドオンなどの知識も乏しいと言ったケースが少なくないのではないでしょうか。
ちょうどGoogleのAndroidが日本にやってきて、Javaエンジニアたちが飛びついた状況と似ています。Shopifyのケースでは多くのWeb制作会社がWordPressの取り扱いを始めたようなノリでその簡単さ故に飛びついた状況ではないでしょうか。

ShopifyでECサイトを作ることは簡単です。しかし当然ながら大切なのはその先にある今後のビジネスの変化に対応ができること(つまり拡張性に制限がないこと、如何様にもカスタマイズできる技術力とその提案力)によって売上及び利益を拡大できるところまでサポートできる事が重要です。

このようにMagentoにせよShopifyにせよ、プラットフォームだけでなく、それを取り扱うベンダーの経験や実力によってもビジネスの成否が大きく左右されますから、本記事が今後より確実にビジネスを成功へと近づけるためのご参考となれば幸いです。

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