
Adobe Commerce / Magento Open Source リリース(2025年5月)の詳細と影響範囲
Adobe CommerceおよびMagento Open Sourceの各セキュリティパッチリリースは、システムのセキュリティ強化とパフォーマンス改善を目的としています。これらのリリースは、以前のバージョンで特定された脆弱性へのセキュリティ修正に加え、特定の機能改善や互換性向上を含んでいます。Adobe Commerce B2Bをご利用のお客様は、対応するB2Bセキュリティパッチへの更新も推奨されます。
以下に、各バージョンの主なハイライトを詳細な説明と影響範囲を加えて説明します。
セキュリティアップデート
クロスサイトスクリプティング(Reflected XSS)(CWE-79)
- 概要
Reflected XSSは、攻撃者が悪意のあるスクリプトをウェブサイトのユーザーに送り込むことで発生する脆弱性です。このスクリプトは、ユーザーのブラウザ上で実行され、ウェブサイト自体が信頼できるソースであるかのように見せかけます。 - 仕組み
攻撃者は、ウェブサイトのURLに悪意のあるスクリプトを埋め込み、そのURLを被害者にクリックさせます。被害者がそのURLをクリックすると、ウェブサイトはURL内のスクリプトをそのままユーザーのブラウザに「反射」し、ブラウザはそのスクリプトを正規のコンテンツとして実行してしまいます。 - 潜在的影響
- 任意のコード実行
攻撃者は、ユーザーのブラウザ上で任意のJavaScriptコードを実行できます。これにより、セッションクッキーの盗難(ユーザーとしてログイン状態を乗っ取る)、個人情報の窃取、フィッシング詐欺への誘導などが可能になります。 - サイトの改ざん
一時的または部分的にウェブページの表示を改ざんし、ユーザーを騙すことができます。
- 任意のコード実行
- このケースの特記事項
この脆弱性を悪用するには「認証が必要」かつ「管理者権限が必要」とされているため、悪用される範囲は限定的ですが、管理者アカウントが侵害された場合のリスクは非常に高いです。
不適切な認証 (CWE-285)
- 概要
不適切な認証の脆弱性は、システムがユーザーの身元を正しく確認できない場合に発生します。これは、パスワードの検証が不十分であったり、認証プロセスに論理的な欠陥があったりする場合に起こります。 - 仕組み
認証プロセスにおける設計ミスや実装ミスにより、正規のユーザーでなくても、認証を迂回してシステムにアクセスできてしまう可能性があります。例えば、パスワードを何度も試行できる、認証トークンが容易に推測できる、などの問題が考えられます。 - 潜在的影響
- セキュリティ機能のバイパス: 認証を突破されることで、本来アクセスが制限されている機能やデータに不正にアクセスされる可能性があります。
- 不正アクセス: 攻撃者が正規のユーザーとしてシステムにログインし、許可されていない操作を実行できます。
- このケースの特記事項
- 「認証が必要」だが「管理者権限は不要」であるため、一般ユーザーのアカウントであっても悪用の対象となる可能性があり、広範なユーザーに影響を与える恐れがあります。
不適切なアクセス制御 (CWE-284)
- 概要
不適切なアクセス制御(または権限昇格の脆弱性)は、認証されたユーザーが、本来アクセスする権限のないリソースや機能にアクセスできてしまう場合に発生します。 - 仕組み
システムが、ユーザーがリクエストした操作やデータへのアクセスを許可するかどうかを適切にチェックしないことで、脆弱性が生じます。例えば、一般ユーザーがURLのパラメータを改ざんするだけで、管理者しか実行できない操作を成功させてしまう、といったケースが考えられます。 - 潜在的影響
- セキュリティ機能のバイパス
権限のチェックが不適切であるため、セキュリティ制限を回避して、本来許可されていない操作を実行できてしまいます。 - 権限昇格
権限の低いユーザーが、より高い権限を持つユーザー(管理者など)の権限を取得し、システム全体を制御できるようになる可能性があります。 - データ漏洩/改ざん
アクセス権のない機密データにアクセスしたり、データを改ざんしたりすることが可能になります。
- セキュリティ機能のバイパス
- このケースの特記事項
- 「認証が必要」かつ「管理者権限が必要」とされるケースと、B2B版では「権限昇格」の懸念があるケースが指摘されています。管理者アカウントが乗っ取られたり、特定の条件が揃ったりした場合に、システムへの広範な制御を許してしまうリスクがあります。
これらの脆弱性は、オンラインストアなどの重要なウェブアプリケーションにおいて、データ漏洩、顧客情報の悪用、ビジネスの中断など、深刻な結果を招く可能性があります。そのため、アドビが推奨するように、速やかに最新バージョンへのアップグレードを行うことが極めて重要です。
各バージョンのハイライト
2.4.8-p1
MariaDB 10.11 のサポート
- 詳細
このリリースでは、データベースとしてMariaDB 10.11のサポートが新たに追加されました。 - 影響範囲
- 影響を受けるユーザー/システム: システム管理者、データベース管理者、開発者。
- 影響
最新のMariaDBバージョンへのアップグレードを検討しているユーザーは、公式サポートによって安定性とパフォーマンスの向上が期待できます。これにより、より新しいインフラストラクチャへの移行や、MariaDB 10.11で提供される新機能やセキュリティ改善を活用できるようになります。
API パフォーマンスの強化
- 詳細
以前のセキュリティパッチの適用後に発生していた、一括非同期Web APIエンドポイントのパフォーマンス低下が解消されました。 - 影響範囲
影響を受けるユーザー/システム: 外部システムと連携する開発者、大規模なデータインポート/エクスポートを行うシステム連携、基幹システムとの同期。 - 影響
- 修正前
大量のデータをAPI経由で処理する際に、著しい遅延やタイムアウトが発生し、ビジネスプロセスに支障をきたす可能性がありました。特に、顧客データの一括更新や商品情報の同期など、時間のかかる操作に影響が出ました。 - 修正後
API処理の速度が向上し、システム連携の効率が改善されます。これにより、データの同期時間が短縮され、業務の円滑化に貢献します。
- 修正前
CMS ブロックアクセス修正
- 詳細
権限が制限された管理者ユーザー(例: マーチャンダイジングのみのアクセス権を持つユーザー)が、CMS Blocksリストページを閲覧できないという問題が修正されました。以前は、セキュリティパッチ適用後に設定パラメーターが不足しているためにエラーが発生していました。 - 影響範囲
- 影響を受けるユーザー/システム: マーチャンダイザー、コンテンツ管理者、限定的な管理権限を持つストア管理者。
- 影響
- 修正前
権限が制限された管理者がCMSブロックの内容を確認・編集できず、自身の担当業務(例: トップページのバナー更新、特定のプロモーションコンテンツの管理)を遂行できない状況に陥っていました。これにより、コンテンツ更新の遅延や、完全な管理者権限を持つユーザーへの作業の集中が発生しました。 - 修正後
必要なCMSブロックへのアクセスが可能になり、担当業務を円滑に実行できるようになります。これにより、コンテンツ管理の効率が向上し、チーム内の役割分担が適切に機能するようになります。
- 修正前
Cookie 制限互換性の向上
- 詳細
フレームワーク内のMAX_NUM_COOKIES定数に関連する、後方互換性のない変更が解決されました。 - 影響範囲
- 影響を受けるユーザー/システム: サードパーティ製拡張機能、カスタム開発、Cookieを利用するマーケティングツール、開発者。
- 影響
- 修正前
既存の拡張機能やカスタマイズがCookieの処理に関して正しく動作しない可能性がありました。これにより、セッション管理の問題、カート情報の消失、ユーザーのトラッキング異常など、顧客体験に直接影響を及ぼす可能性がありました。また、開発者が既存のコードを修正する必要が生じるなど、メンテナンスコストが増加しました。 - 修正後
Cookie関連の互換性が復元され、既存の拡張機能やカスタマイズが以前と同様に機能するようになります。これにより、システム全体の安定性が向上し、不必要な開発作業を回避できます。
- 修正前
非同期操作
- 詳細
以前の顧客の注文を上書きする際の非同期操作に制限が導入されました。 - 影響範囲
- 影響を受けるユーザー/システム: システム管理者、データインポートを行う運用担当者、開発者。
- 影響
- 修正前
誤った設定や予期せぬスクリプト実行によって、顧客の注文データが意図せず上書きされるリスクがありました。これにより、データ損失や顧客への誤った情報提供、ひいては顧客満足度の低下やビジネス上の問題に発展する可能性がありました。 - 修正後
重要なデータの上書き操作に対する安全性が高まります。これは、データの整合性を保護し、運用上のリスクを低減するための重要なセキュリティ強化策です。
- 修正前
2.4.7-p6
MariaDB 10.11 のサポート
- 詳細
2.4.8-p1と同様に、MariaDB 10.11のサポートが追加されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
API パフォーマンスの強化
- 詳細
以前のセキュリティパッチの後に導入された一括非同期Web APIエンドポイントのパフォーマンス低下が解決されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
CMS ブロックアクセス修正
- 詳細
権限が制限された管理者ユーザーがCMS Blocksリストページを表示できない問題が修正されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
Cookie 制限互換性の向上
- 詳細
MAX_NUM_COOKIES定数に関する後方互換性のない変更が解決され、拡張機能との互換性が確保されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
非同期操作
- 詳細
以前の顧客の注文を上書きするための制限付きの非同期操作が導入されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
2.4.6-p11
MariaDB 10.11 のサポート
- 詳細
2.4.8-p1と同様に、MariaDB 10.11のサポートが追加されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
API パフォーマンスの強化
- 詳細
以前のセキュリティパッチの後に導入された一括非同期Web APIエンドポイントのパフォーマンス低下が解決されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
CMS ブロックアクセス修正
- 詳細
権限が制限された管理者ユーザーがCMS Blocksリストページを表示できない問題が修正されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
Cookie 制限互換性の向上
- 詳細
MAX_NUM_COOKIES定数に関する後方互換性のない変更が解決され、拡張機能との互換性が確保されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
非同期操作
- 詳細
以前の顧客の注文を上書きするための制限付きの非同期操作が導入されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
2.4.5-p13
API パフォーマンスの強化
- 詳細
以前のセキュリティパッチの後に導入された一括非同期Web APIエンドポイントのパフォーマンス低下が解決されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
CMS ブロックアクセス修正
- 詳細
権限が制限された管理者ユーザーがCMS Blocksリストページを表示できない問題が修正されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
Cookie 制限互換性の向上
- 詳細
MAX_NUM_COOKIES定数に関する後方互換性のない変更が解決され、拡張機能との互換性が確保されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
非同期操作
- 詳細
以前の顧客の注文を上書きするための制限付きの非同期操作が導入されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
2.4.4-p14
リリースタイプ
- 延長サポートセキュリティリリース (Adobe Commerce顧客のみに提供)
API パフォーマンスの強化
- 詳細
以前のセキュリティパッチの後に導入された一括非同期Web APIエンドポイントのパフォーマンス低下が解決されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
CMS ブロックアクセス修正
- 詳細
権限が制限された管理者ユーザーがCMS Blocksリストページを表示できない問題が修正されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
Cookie 制限互換性の向上
- 詳細
MAX_NUM_COOKIES定数に関する後方互換性のない変更が解決され、拡張機能との互換性が確保されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
非同期操作
- 詳細
以前の顧客の注文を上書きするための制限付きの非同期操作が導入されました。 - 影響範囲
2.4.8-p1と同様です。
まとめ
Magentoの最新リリースは、セキュリティの強化、プラットフォームの基盤の最新化、パフォーマンスの向上、そして顧客体験とマーチャントオペレーションの両方を改善する新機能に重点を置いています。特にPHP、MariaDB、MySQLなどのコアテクノロジーのアップデート、Braintreeを含む支払いシステムの機能強化、GraphQLの改善が大きな特徴です。これらのアップデートにより、よりセキュアで高速、かつ柔軟なECサイトの構築・運用が可能になります。